2012年4月30日月曜日

カテゴリー[授業のお時間] - 医学チックなお話


放送大学の特別講義を観ました。
大学で習った内容+αという内容で、2回目ということもあって、大変分かりやすかったです。
その内容を、ここにメモしたいと思います。
まずは…

(見にくいかも知れません。すみません)
 ブラッグピークとは、陽子線は水中を通過するとき、ある所までは少量のエネルギーしか失わないのですが、止まる直前に残りのエネルギーを集中的に失って停止することです。下図を見てください。

このように、がんの存在する部位に集中的に効果があり、正常な周辺部に副作用をもたらすことなく、治療することができます。

 高LET(linear energy transfer 線エネルギー付与)は、電離密度が高いため、エネルギーが高いため、生物学的効果が高いという性質を指します。つまり、高LETであるほど、がんの制圧効果が高い、ということです。

 このように、重粒子線はブラッグピークの性質を有し、高LETということで、近い将来有望な治療法と考えられています。さらにここで、特徴をまとめておきます。
1)重粒子線は高LET(linear energy transfer 線エネルギー付与)
→電離密度が高い→エネルギーが高い。
2)生物学的効果は従来のX線やγ線と違って、生物学的効果比(RBE;Relative Biological Effectiveness)が2~3程度である→RBEが大きい→癌に対する効果が大きい。
3)線量分布が良好=狙い打ちできる
4)放射線抵抗腫瘍にも有効である。
5)OER(酸素増感比Oxygen Enhancement Ratio)が小さい=酸素が必要ない。
6)細胞周期依存性が小さい=どの時期でも感受性が高い
7)短期小分割照射が有利→一気にかたをつける
8)SLDR(亜致死損傷回復)、PLDR(潜在的致死損傷回復)が起こらない
→癌が回復できないほど叩ける。

…という特徴があります。
放射線医学における歴史においては、
1)線量分布の局在性の制御困難(病巣のみに照射するのが難しい)
→術中照射や定位照射などの開発。
2)殺細胞時の困難(放射線抵抗性のがん細胞への治療)
→ハイパーサミア、放射線増感剤などの開発。
 が課題となっていたのですが、これを炭素線(重粒子線)によって克服することができるのではないか、ということが言われています。

 炭素線の適応としては、
1)頭頚部 2)肺 3)肝 4)前立腺 への治療が良好と考えられています。


・まだ保険適応がない(06/03/20現在)ため、300万円という高額医療
・巨大な施設が必要となり、普及率の低さが問題となる。
・正常細胞との分別(画像診断)が完全にはできないという技術的問題があるため、再発の可能性がある(これは、手術でも同様)。

…などの問題がありますが、重粒子線治療は、将来、がん治療の中心的割合を担うと思われます。今後の発展に期待しております。



各論3 「皮膚・頭頸部疾患」
(問題)
疱疹状皮膚炎の治療にはDDS〈diaminodiphenylsulfone〉内服が有効である。

(答え)○
(解説)
 疱疹状皮膚炎とは、自己免疫疾患の1つで、強いかゆみを伴う小水疱の塊と、蕁麻疹のような腫れが生じる。
 病名は「疱疹(ヘルペス)状」であるが、この病気はヘルペスウイルスとは無関係である。疱疹状皮膚炎では、小麦、ライ麦、大麦やそれらから作られた製品に含まれるグルテン(タンパク質の1種)によって体内の免疫システムが活性化され、皮膚が攻撃を受けるために発疹やかゆみが生じる。疱疹状皮膚炎の患者は、グルテンに対する過敏性が原因で起こるセリアック病(吸収不良: セリアック病を参照)を発症することがある。これらの人々は、その他の自己免疫疾患、具体的には甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、サルコイドーシス、糖尿病などの発生率も高くなる。疱疹状皮膚炎の患者は、腸にリンパ腫ができることもある。
 小水疱は徐々に出現する。好発部位は肘、膝、尻、腰、後頭部である。顔面や頚部に、急にできることもある。これにより掻痒と疼痛とをかなりひどく感じる。イブプロフェンなどの抗炎症薬は、発疹を悪化させる。
 診断は、皮膚生検に基づいて行う。この検査により、皮膚のサンプルに特徴的な抗体がみられる。
 治療としては、DDS(diaminodiphenylsulfone)が用いられる。
 水疱は治療を行わない限り、自然治癒しないDDS(diaminodiphenylsulfone)を経口で服用すると、ほとんどの場合1~2日で症状が改善されるが、これを服用する場合は血球数を定期的に測る必要がある。
 薬の服用と、グルテンを摂取しないようにする厳密な食事制限(小麦、ライ麦、大麦をいっさい摂取しない)を6カ月以上続けて症状がコントロールできるようになったら、薬は中止できる。しかし、一部には薬の服用をずっと続ける必要がある人もいる。また、ほとんどの人は、たとえ少量でもグルテンを摂取すると症状が再発する。グルテンを摂取しないよう食事制限をすると、腸にリンパ腫ができるのを防ぐこともできる。

[注]これは、医学評論社で毎平日更新中の一問一答を解説していく…という、不毛なことをやるコーナーです。


自己薬うつ病

 ハリウッド映画なんかを観てると、ベトナム戦争帰りの軍人が、PTSDに悩まされるシーンが結構な割合で登場していたり、阪神大震災の被災者の方々や、最近ではJR福知山線脱線事故で被害に遭われた方々がPTSDで悩まされている、といった報道がなされたりもしています。
 こういったことで、漠然と感覚的にとらえることはできますが、一体、PTSDとは何か?と質問されると、やはり上手く答えることができませんでした…ということなので、精神科の勉強をちょうど始めているところということもあって、ここに調べたことを書きたいと思います。

【PTSD(post‐traumatic stress disorder)の概念】
 強い精神的外傷後に生じてくる精神症状をいう。自然災害,戦争体験,事故,あるいは強盗や強姦などの被害後,あるいは目撃後にみられるのが代表的なもので、とくに欧米では、ドイツ・ナチによる強制収容所,ベトナム戦争,湾岸戦争,レイプなど、しばしば治療や研究の対象とされていたが、わが国でも1995年1月に発生した阪神・淡路大震災後,PTSDが多発し、一躍注目されるようになった。
 心的外傷の直後に生じる急性反応(急性ストレス反応acute stress reaction;ASR)ではなく、外傷経験から1,2週間ないし数ヵ月たってから発症してくる、いわゆる遷延反応のことをいう。体験した悲惨,残酷な状況が眼前に再現し、悪夢にうなされる。不安,憂うつ感,無欲,無関心,無力感,易怒,罪悪感,絶望感,不眠,錯乱などの症状が出現し、幻覚も生じることがある。心因性健忘をみとめ、事故のことを想起できない。動悸,発汗など自律神経症状もみられることがある。抗不安薬,抗うつ薬など薬物療法のほかに、種々の精神療法が必要である。予後は良好である。

【PTSDの具体的な症状】
1)侵入(出来事の再体験)
苦痛を伴う・自己回避不能、フラッシュバック…など
引き金(場所、時刻、同様の事件の報道など)があり、上記の症状を起こすこともあります。

2)回避
感情や記憶の再体験を恐れるがための回避行動、出来事の記憶の健忘、失感情、離人感(自分の知覚、感情、行為などについて現実感が湧いてこない)、未来の断絶感(早死、事故死を確信、自殺念慮とは異なる)

3)覚醒の持続亢進
不眠、悪夢、易怒的、神経過敏

4)社会的、職業的、または他の重要な領域における機能障害
体験を家族に話すことで助けを得る、人的資源を動員するなど、必要な課題を遂行する能力の障害

【予防・治療】
 心的外傷を負って間もない頃は、初期の治療として身体の治療、生活基盤の支援、安全の確保、社会的なサポート、投薬も考慮した鎮静・静穏、受身的なヒアリング、積極的なデベリーフィングなどがあげられる。また、慢性的なPTSDに関しては、PTSDの同定・受容、治療関係確立、トラウマワーク(心理的・生理的反応のコントロールを行い、トラウマと上手く折り合いをつける)、薬物(抗不安薬,抗うつ薬など)、社会生活のサポート…などがあげられる。

…阪神大震災の被災者は、生命の危機を感じたり、友人や家族など親しい人たちの死に直面し、結果としてこれら痛ましい経験が心的外傷となり、PTSD、うつ病、身体化障害、アルコール依存症などを引き起こされてしまわれた方々が多くいたと聞きます。
 こうした場面に、"話を聞く"というボランティアの方がいらっしゃったのが報道されていたのを覚えています。今、考えると、PTSDのケアとして、非常に重要なことをされていたのだとわかりました(治療の"受身的なヒアリング"ですね)。突発的な事件事故にみまわれることは、誰しもに起こりうることです。そのような時に、PTSDへの理解が非常に重要なことであるということが、今回調べてみて、非常によくわかりました。

[参考文献]
Step 精神科
非常にわかりやすいです。難解な用語も、身近な例でしっかりと説明してくれます。「ココロのことを知りたい」という方、是非とも読んでみてください。心理学の素養&医学的基礎がなくても(私を含め)も、しっかりと理解できます。


民間医局さんの問題集(メデイカルeラーニング)に、以下のような問題が出てました。

(問題)
湿疹・皮膚炎郡の症候でないのはどれか。
A. 紅斑
B. 丘疹
C. 膨疹
D. 小水疱
E. 鱗屑

(答え)C. 膨疹
(解説)
○ A 湿疹・皮膚炎で紅斑を認める。
○ B 湿疹・皮膚炎で丘疹も認める。
× C 膨疹とは蕁麻疹の皮疹であり、湿疹・皮膚炎の症候ではない。
○ D 湿疹・皮膚炎で認める。
○ E 慢性化すると鱗屑を認める。

ということなんですけど、ここで「湿疹と皮膚炎、蕁麻疹ってどう違うの?」という疑問が起こりました。
…皮膚科の試験は昨日、つつがなく終わりましたが、上述のような基本的事柄を理解してないことが発覚しました。
テストのための勉強と、本当に理解しているかどうかは別モノ、ということがわかった次第。


鉄にきび

…さて、まずは教科書的な内容について
・湿疹について
 湿疹と皮膚炎は同義(皮膚炎を同義語とするには反論もあるが,湿疹皮膚炎群と一括することが多い)であり、臨床的には掻痒や発赤、落屑、漿液性丘疹を呈し、湿疹三角(下図参照)と呼ばれるような一定の臨床経過を辿る。病理組織学的には表皮細胞間の1/3を占め、最もポピュラーな疾患である。外的因子(薬剤、化学物質、花粉、ハウスダストなど)と内的因子(健康状態、皮脂分泌状態、発汗状態など)が重なって発症する。治療はステロイド外用である。

・蕁麻疹について
 掻痒を伴う一過性、限局性の紅斑や膨疹を呈する。症状が6週間以内に収束するものを急性蕁麻疹、それ以上のものは慢性蕁麻疹である。血管透過性が亢進し、真皮上層に浮腫形成をする。紅色皮膚描記症陽性となる。治療には抗ヒスタミン薬などを投与する。

…つまりは、
(湿疹)                 
症状:掻痒や紅斑→丘疹→落屑という経過をとる。 
病因:外的&内的因子が発症原因    
病理組織像:表皮細胞間浮腫(海綿状態)       
     急性→リンパ球浸潤
        表皮内水疱
     慢性→過角化&不全角化
        表皮突起の延長  
治療:ステロイド外用

(蕁麻疹)
症状:紅斑や膨疹、激しい掻痒を呈する。膨疹は数十分~24時間以内に消退する。
病因:1型アレルギー反応(IgEおよびヒスタミンが関与)or非特異的刺激
検査所見:紅色皮膚描記症陽性(皮膚を先端が鈍なもので擦ると赤くなる)
     血清IgE値、IgE RAST、皮内反応など
治療:抗ヒスタミン薬

…ということです。経過や症状など、まるっきり違いますね。特に、蕁麻疹は膨疹を呈し、すぐに消退する(紅斑が数日間残ることもあるが)ことや紅色皮膚描記症陽性などに対し、湿疹は丘疹→落屑っていう経過をとることなどの違いがあります。

…蕁麻疹については、原因となるものがわからないケースが多いため、接触蕁麻疹や物理性蕁麻疹など、原因がはっきりと分かるもの以外は、あまり原因追求を深くしない(抗ヒスタミン薬で抑えるだけ)…ということを授業で聞きました。

もう少し、休み期間中に教科書を読み直そうと反省…


 芸能人の、夏目雅子さん、渡辺謙さん、アンディ・フグさん、吉井怜さん、本田美奈子さん…たちなど著明な方々が、白血病に患われた方々もいらっしゃったことや、『世界の中心で愛を叫ぶ』の話の中でも、白血病が登場したことで、『白血病』の知名度が上がったように思われます。
 そのせいかもしれませんが、タイトルそのものである『骨髄移植って何?』という質問を受けたのですが、またしても上手く答えることが出来なかったので、再び勉強したことを以下に示します。
 いつも"わかったつもり"で、ぼんやりと勉強してることを猛省…

 骨髄移植とは、受血者の骨髄細胞を死滅させて、そこへ新たな骨髄細胞を輸注することにより造血能を再生させることをいいます。他の臓器移植と同様に、骨髄の造血という機能を開始すれば移植骨髄は生着したといい、移植した骨髄細胞も死滅して造血が行われなければ拒絶といいます。
 骨髄移植は、造血幹細胞移植の一種です。造血幹細胞移植とは,すべての血球に分化しかつ自己再生能を持つ造血幹細胞を用いて,患者の造血能,免疫能を再構築させる治療法です。造血幹細胞移植には、
1)骨髄移植
2)末梢血幹細胞移植
3)臍帯血移植
 に分類されています。これは、造血幹細胞のソースとして何を用いるかによる分類と言えます。

 また、別の分類として、"ドナーが誰か"によって分けるものもあります。すなわち、
1.自家移植
2.同系移植
3.同種移植
 があります。1.自家移植とは、自らの骨髄細胞をあらかじめ採取保存しておいて、後に自身に輸注する方法です。2.同系移植とは、一卵性双生児の一方から他方に骨髄を輸注する方法です。また、3.同種移植とは、組織適合抗原の一致した同胞や他人から骨髄を採取して輸注する方法です。
 1.自家移植は大量化学療法としての側面を持ち(大量の抗癌剤の効果を期待する通常の化学療法の延長上にある治療と考えられます)、2.同系移植、3.同種移植はそれに加えて免疫療法としての側面を持ちます。同種移植が他の臓器移植と大きく違う点として、GVHD(移植片対宿主病)を起こし、これが患者の生命予後に大きく影響することが挙げられます。
 まとめれば、
1.自家移植→大量化学療法後に、残存する腫瘍を抑え込むが、同時に骨髄も枯渇させてしまうため、それ以前に採取しておいた自身のHSC(造血幹細胞)を戻すことによって造血機能を回復させるという治療法。生着に問題がないという点が利点。
[補足]
 あくまで抗癌剤による治療の延長上に位置する治療法であることから、抗癌剤に対する感受性を持つ疾患が対象となります。通常の化学療法で寛解に近い状態が得られたら、骨髄機能が回復するときにG-CSF製剤を用いて末梢血幹細胞を採取し、骨髄破壊的な大量抗癌剤の治療を行ったのち,採取したHSCを輸注します。最近では、免疫系の再構築を期待し、自己反応性T細胞の除去のために、重症自己免疫疾患に対しても試みられています。


重度の打撲の治療

2.同系移植 3.同種移植→GVHDに似た反応が、レシピエントに残存している腫瘍細胞にも起こり、それを移植片対腫瘍効果(GVT)といいますが、この免疫療法的効果によって腫瘍を押さえ込む、という治療法。
[補足]
もちろん、HLAが一致しないと,レシピエントの免疫抑制が不十分の場合、GVHDにより生着不全を起こします。このGVHDをどれくらい抑制するかが難しいところです。というのも、腫瘍を押さえ込むのに重要なGVTを抑制しすぎても、GVHDが起こっても大変なことになります。
[HLAとは]
HLA遺伝子は第6番染色体短腕に位置し、両親のハプロタイプを子に受け継いで共優性に形質が発現します。HLAはA,B,Cなどのclass1とDR,DQなどのclass2の2群に大別されます。

…概略だけですが、骨髄移植は上記のようなものがあり、特徴にともなって、一長一短のあるものです(その特徴すら、ぼんやりとしか捉えていなかったことが悲しい…)。
さらに詳しい内容は、順天堂大学の血液内科のページがよく纏まっています。


前回はフィナステリドについて書きましたが、今日、授業で脱毛に関する話題が触れられました。なんともタイムリーなだと思った次第。
フィナステリドについても触れられていました。以下に補足内容を書いてみます。
[補足]
髪の成育過程をヘアサイクル(成長期→退行期→休止期→成長期…というサイクル)といい、男性型脱毛症は髪の成長期が短くなり、細く短い毛が増えます(軟毛化)。遺伝的背景が強く、早い人では20代から進行し、女性にも起こります。
…で、この中心的な原因となるのは前回でも述べましたが、DHTです。フィナステリドは、5αreductase2型(5α還元酵素)がテストステロン→DHTへの代謝を阻害しているわけです。
…で、その成功率(治癒率)なんですが、高度改善例は全体の5%、中度改善例は40%近く…と、結構高いとは思うのですが、いかんせん2年近くの長い目をみて、保険適応外、という負担はどうするか、という問題が残ってます。副作用に関しては、ステロイドホルモン様作用などはないということなので、結構マイルドな働きをするんじゃないかと考えられます。

…で、次に表題にも挙げられていましたが、再生医療の分野で注目されているES細胞について書いてみます。恐らく、薄毛治療の究極の方法でしょう。
 ES細胞とは、受精卵の分化途中にある胚盤胞を壊し、内部細胞塊をとってきたものですが、ご存じの通り、全臓器への分化能を持っているわけなので、髪へ分化することも可能です。
…まぁ、実用段階ではないのですが、ヌードマウス(ツルツルのマウス)にES細胞を途中まで分化させておいたものを移植すると、ちゃんと毛が生えています。ここまで出来れば、完全に薄毛は治るでしょう。でも、『何もそこまで…』と授業を聞いていて思ってしまいました。

最後に…円形脱毛症について。
これは、発生機序&治療が興味深かったので、書いてみます。
円形脱毛症は、前駆症状や先行する病変がなく突然、円形あるいは楕円形の脱毛斑を生ずる疾患です。通常頭部ですが眉毛,須毛,陰毛あるいは毳毛部にも及ぶこともあります。発生機序としては、自律神経障害説(血管機能異常,精神身体学的因子),内分泌障害説,毛周期障害説(病巣部の毛が一斉に休止期毛となる),感染アレルギー説,自己免疫説(毛母細胞に対する自己抗体の産生があるという考え)など…いろいろの仮説があります。
 授業で取り扱っていたのは、最後の自己免疫説でした。具体的には、円形脱毛症を起こしている部位では、Th1(ヘルパーT細胞1型)が成長期に毛周囲に浸潤していることから、Th1による毛胞への自己免疫が原因であると考えられているとのことです。モデルマウスも存在し、C3H/HeJマウスといい、CD4+T細胞やCD3+T細胞が毛胞周囲に浸潤し、円形脱毛症を起こします。

…つまり治療は、この自己免疫を起こしてしまっているTh1をなんとか出来ないか?と考えるわけです。この方針については、以下の3つがあります。
1)抗IFN-γ中和抗体
2)IL-4局所注射
3)T-bet antisense oligonucleotideの局所注射

具体的には、以下のような機序で効きます。
1)Th0はIFN-γに暴露することでTh1になる。そこで、IFN-γを中和する抗IFN-γ中和抗体を用いることで、発毛することが考えられます。
2)Th2はIL-4を受けて分化するわけですが、Th2量が増えれば、Th1も減るので、IL-4の局所注射を行うことでも発毛が期待できます。
3)T-bet antisense oligonucleotideがあります。T-betとは、転写因子T box familyの一つでTh1細胞特異的に発現し、IFN-γ遺伝子の転写活性化などによってTh1分化を促進し、反対にTh2分化のプログラムを抑える…ということなので、これを阻害するT-bet antisense oligonucleotideによって、Th1産生量を低下させようと考えるものです。

何ともまとまりがありませんが、髪の話だけに、まるでクセっ毛だな…なんてオチはいかがでしょうか。

…お後がよろしくないようで。



 知り合いの女性に「精神的に不安定になるのがイヤで、ピルを飲みたいのだけど、副作用ってどんなものがあるの?」と質問されたのですが、即答できずに不甲斐ない思いをしたので、調べたことを書いてみます。

1.そもそもピルとは何?
 女子が避妊の目的で服用する薬剤で、一般にピルと呼ばれている。現在もっとも広く使用されているのは、ゲスターゲン(プロゲステロンおよびそれと類似の生物学的作用をもつ物質の総称)とエストロゲンの混合剤で、その主な作用機序は排卵抑制であるが、それ以外に頚管粘液の性状、子宮内膜の生化学的および組織学的性状、卵管運動にも変化を与え、受胎を障害すると考えられている。
…ということなので、
1.下垂体に作用してFSHとLHの分泌を抑制(ネガティブフィードバックをかけるわけですね)する。
2.子宮内膜の肥厚を抑制し、受精卵が着床しにくい状態にする。
3.子宮頚管粘液に変化を及ぼし、精子の子宮への侵入を妨げる(精子の受け入れ態勢をするはずの子宮頚管粘液が、その機能を果たせなくする)。
 という3つの機能で、避妊を可能としているわけです。

[補足]プロゲステロンが基礎体温を上げることから、「じゃあ、ピル飲んでるとずっと高温相が続くの?」と思ったのですが、一相性のピルは、高温一相性を示すみたいです。ですが、段階型ピルでは生理的なホルモン分泌状態を作るために、子宮内膜も生理的な変化(排卵までの増殖期、排卵後の分泌期)を示すことになるらしいです。そのために、通常の月経にきわめて近い消退出血を体験することになります…ということなんで、私の知り合いが望んでいるのは、前者の方なのか、とわかりました。また、出血はプロゲステロンが減少する時にみられるらしい。これは、普通に月経が起きるときと同じですね

2.結局のところ、副作用は?
まずは、ピル服用開始時に起こる症状(つまりホルモン環境の変化に伴うもの)として、悪心・嘔吐、乳房緊満感、頭痛・偏頭痛などがあります。
また、他に主だった副作用としては、血栓症、心筋梗塞、脳血管障害、高血圧、糖代謝異常、肝機能異常などがあります。つまり、これらの既往があった場合などは、使用を控えた方が良いです。また、血栓症などのリスクはエストロゲンの含量に比例すると言われているので、低用量ピルを用いれば、発生率は低下できると考えられています。
[補足]
最後に、知り合いの女性も気にしていたのですが…発癌性に関してです。
卵巣癌や子宮体癌は減少します。一方、乳癌の低用量ピル服用者における相対危険率は上昇することから、乳癌の心配がある方(家族歴のある方など)は控えた方が良いかもしれません。また、子宮頚部腺癌発生増加との可能性も示唆(これは、セックスの活動性が高いから、HPV感染率が高いとも考えられますが…)されています。

…ほかにも、ヘビースモーカの方などは止めた方が良いなど、細かいリスク管理は必要となりますが、月経困難症の減少(生理が軽くなる、規則正しくなる)、卵巣貯留嚢胞の減少、骨盤内感染症の減少、ニキビや体毛が薄くなる…などのプラスの面があるので、そこら辺のプラスマイナスの算段をして、使用を考えてはいかがでしょうか?

[参考文献]

COMPASS 産婦人科


大豆イソフラボンでお肌ツヤツヤ…ってな具合で、最近、健康ブームに乗ってもてはやされている大豆ですが、妊婦さんにはちょっと気をつけて欲しい話題です。

…まぁ、関係あるのかどうか、しっかりとしたエビデンス(証拠)があるわけではありませんが、どうやら大豆イソフラボンなどのフラボノイドが、お腹の中の赤ちゃんの小児白血病発症率を上げてしまうかも知れないということです。

[生化学チックなお話]
 大豆イソフラボンやケルセチン等のフラボノイドは、DNA の構造を正常に保つ働きを持つトポイソメラーゼ2を阻害し、MLL(myeloid-lymphoid leukemia)遺伝子の異常(転座・再配列等の変異)を生じさせる可能性があることが報告されている。MLL 遺伝子の再配列は、トポイソメラーゼ2阻害作用から抗がん作用を示すと考えられている抗がん剤のVP16 やドキソルビシン(トポイソメラーゼ2阻害剤)によっても誘発され、これらの薬剤による治療によって後に急性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病が発症することが知られている。
 また、乳幼児急性骨髄性白血病の65%、急性リンパ性白血病の85%にMLL 遺伝性の異常が関与しているとされるが、1歳以上で診断される場合はその5%のみしかMLL 遺伝子の異常が関与しないことから、乳幼児におけるMLL 遺伝子関与の白血病は、子宮胎内で生じるものと考えられている。このことから、妊娠中におけるトポイソメラーゼ2阻害作用のある物質への暴露による胎児への影響について懸念が示されている。

…つまり、大豆イソフラボンなどのフラボノイドは、DNAの正常機能を保つためのトポイソメラーゼ2の働きをを阻害→結果MLLという遺伝子の異常を生じる→小児白血病の発症…ということが考えられているようです。

…まぁ、あくまでも"仮説"なので、ちょっと気をつける程度(氷川きよしが宣伝してるような黒豆イソフラボンみたいなやつを避ける、程度)でいいと思いますが、妊婦さんは、気に止めてみてください。また、健康に良いから、って理由で妊婦さんに勧めたりはなさらないほうがいいかも。



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